8年のリハビリ/草野大悟2
 
あなたが、ショートステイにいったその日
おれは、ふーっ、とため息をつき
ほっとしていて、、、からから泣くこころを持てあましている

いつも一緒にいたい、と願った
いつも一緒にいた
それが当然だった

ある日
そう
あの8年前のあの日
あなたはとても遠い所に
あなたの意志とは無関係に連れ去られた

いまでも
なぜ? と。
なぜ? 
石灰化した髄膜腫は
それ以上は肥大しない
という真実は
誰も示唆してくれなかった

あれほどの笑顔が
あっさり奪い去られた人生を
8年
おれたちは生きている

胃瘻
チューブでの食事
口からあなたの大好きなサクランボが
嚥下されることは今はないけれど
近い将来、限りなく近い将来
あなたの口はあなたの大好きなサクランボを
噛み、砕き、嚥下する

信じて
俺たちは
リハビリを続ける




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