犬死にアイリス/和田カマリ
 
その犬は吼え続けた
吼えて
吼えて
部屋中を憎しみで埋めていった

玄関チャイム
電話
きっかけはいつも些細な音

しかし犬は
それらの音を逃さない
激しく喰らい付いていく

吼えて
吼えて
息つく暇も無い

やがて
時間差で聞こえてくる
自分の声にすら吼え始めた

もういいだろう
吼えないでくれ
ほらお菓子をやるから
ダメなのか
どうしたらいいんだ
頭が変になる

「アイリス!俺を舐めるているのか。」

叩いて黙らせたい
叩いてねじ伏せたい

俺は鬼のような叫びを上げ
犬をコーナーに追い詰めると
スリッパで鼻先を打とうとした
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