帰郷/
瀬崎 虎彦
軽薄さを曖昧にぼかして
一輪の草 風に踊る
仕方なしに去来する思いを
吐き捨てるための錠剤たち
時間こそがすべての源泉で
ひとの営みをめぐるすべての不安は
パンタグラフを走る
細密画のように網膜に懐かしい
見覚えのある者たちばかりだった
足跡を訪ねて鉄橋を渡り
車窓に手を振る女たちがいた
同じスピードで走っている
紛糾する音のない地獄の中で
自転だけがたしかに鼓動を削って
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