山/葉leaf
の陽射しとじかの山肌から異常な意味を受け取った
ああ世界において万象は互いに奪い合っている
俺は山をそっくり盗み取ったが俺もまた山にすべてを盗まれた
実存などどこにも存在しないし壁もまた存在しない
山はおのれの不自由でもって俺の不自由をあがなった
俺の肌を滑り落ちる感情と形容詞
ここには主語だけがあり述語など何一つない
莫大な数の交信が暗黙裡に行われ
それは土と岩と苔と草と木を媒体とした
生きることに必要なことをすべて失って
生きないことに必要なことをすべて受け取って
俺は山を降りた先の街並みに新しく迷子になった
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