路地/
まんぼう2
海辺の小さな町は
人がすれ違うだけの
狭い路地しかない
何か食べ物の匂い
古い畳の匂い
苔の匂い
それから年を経た人間の匂い
灰色の板塀越しに
苦い烏瓜の実が生り
この庭に人はいない
オールドレインコートよ
もう旅立たないのか
行旅死亡人は何も言わない
ただ待っている
故郷からの悲しみの便りを
ひかりの戸口をめざして歩もう
ペンキで書かれた足跡のマーク
止まれ注意せよ
暗い路地の奥から大きな黒い牝牛が
飛び出してくるかもしれぬ
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