帰り道/佐東
秋のまん中で
道に迷って
帰り道
自転車の形をした風に
追い越され
背中の向こうがわが
透けてゆく
ぽつぽつ と
散らばってゆく人影が
視えない帰路へと続く轍の上で
ぐしゃ と
踏んづけてしまった
あたたかな会話たちの
輪郭をなぞりながら
つめたい水を生成してゆく
(つめたいね)
風におどる
銀杏の手のひらは
ぼんやり きいろい
秋の連なりを編み込んで
手編みの陽
すっぽり かむった
街中
やわらかな
きおくそうしつ
足もとから産まれてくる
夕ぐれの温度は
ふくらはぎの稜線を伝い
始めから存在していたような
あたたかさで
夜を迎え入れようとしている
(お帰りなさい)
秋の呼吸は何度目かの
まばたきを
し始めた
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