先生/葉leaf
 
新緑が芽吹いていて
先生はそれを眺めながら言った
「お前みたいだな。若くて、将来があって」
私には全ての光景が自分と異質なものに見えた
帰り道私はぼそっと呟いた
「もう若さとかいいのではないかと思っています」
「何を言っているんだ。妥協するな。前を向け」
「若さにはいい面もありますが悪い面もあります」
「それは未熟さというのだろう」
少し険悪になりながら
それでも先生は私を明るく見送ってくれた
社会を憎んだり
周囲に溶け込めなかったり
試験に適応できなかったり
次々と老いを重ねていった私を
先生はあまりにも鮮やかなハンマーで打ってくれた
そしてただ生き続けるというだけで
まわりの人の夢を伸ばし
やる気を起こし
根源から人を動かす情熱そのものであった
先生は先生であってください
僕は悪い教え子でした
現実と妥協して糊口をしのいでいきます
先生のまいた種はたくさん芽を出しました
僕の中にももちろん
僕はそれを大事にしながら
平凡に歳をとっていきます
先生はいつまでも希望の種をまき続けてください


戻る   Point(6)