先生/葉leaf
 



国家試験を受けられなくて
例えば人生の終焉などについて
小部屋の中の哲学を啜っていた私に
先生は声をかけてくれた
人生は終わった
人生とそれに接続する世界は終わった
終わったはずの世界が
どうしてこんなにありありと目に映るんだろう
外は5月の新緑
だがそんな生命の新しさ
全ての肯定的な価値
私はそれを受容する器官を失った
先生は還暦をとうに超えていたが
その5月の新緑のように
真っ青なBMWに乗って
勢いよく私を迎えに来てくれた
あいさつをして乗り込む力のない私
腹の底から返される力強い声
先生
あなたはいつまでも若い
あなたの髪はいつでも整って
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