神のアール/平井容子
紙ねんどでできた魂が
窓ぎわで色あせていました
緑化された街へとつづく
海風にやぶれた辺外の家の
そこだけ乾いた晴れの日のモーヴ
わたしはわたしの火で身を焼いた
「あの日」となづけた意思を
もの言わぬうみへ
ゆゆゆ、と沈めていって
色弱の目を投げる
いちばんとおくから
いちばんちかい波の間に間に…
たそがれ、という響きに
つきまとう恥ずかしい風を招きいれて
いま手縫いのカーテンははためく
出てゆかず
入れもせず
またしても「ここ」で
わたしはわたしの手で火葬する
砂になろうと心尽くす影を
ぎゅっと抱きしめる
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