ピオーネ/AB(なかほど)
 

ひとつずつ
酸っぱい思い出を
口にしてから食べると
より甘く感じる
けれど
三つめの思い出で
泣いてしまいそうで
味がわからなくなる
その種は花を咲かせて
実もなるけれど
その実の中に次の種はつけない
それは
どこか遠くの
だれかの種になる
遠くの遠くの誰かの種になれと
泣いてしまいそうになる

気づくと
皿の上には柄だけが残っていて
皮も残っていない







即興ゴルコンダ より

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