波の下の月/まーつん
イルカの声に
顔をめぐらせると
それは、安心したように
水の下に帰っていった
すぐ傍には
少年の釣り船が
静かに揺れながら
主の帰りを待っていて
再び夜空に目を戻せば
海から上った満月が
彼を静かに見下ろしていた
光る滴をポタポタと
水平線に落としながら
いつの間に
あんな遠くに
行ったのか
星だって
空から堕ちたい
時もある
海に飛び込み
水の流れに
揉みくちゃにされ
悩みや憂鬱を洗い流し
さっぱりした気分を
風で乾かしたら
すがりつく
子供の願いを置き去りに
空に戻りたい時もある
それでも
重いオールを漕いで
トボトボと家路を辿る
少年の帰り道を
月は
最後まで
照らしていた
済まなそうな
顔をして
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