波の下の月/まーつん
 
 一

 夜の水平線が
 両の腕をさしのべ
 その手で満月を挟み

 嘆く空から引き離し
 海の底に沈めた

 光が闇に溶けて
 波の下に燃えつき

 殺風景な夜空に
 取り残された星々は
 不思議そうな目瞬きを
 パチパチ、繰り返すばかり

 二

 ボートの淵に腰かけ
 冷たい水に足を浸す少年

 日焼けした顔に麦藁帽
 釣竿一つを手荷物に
 夏の海で一日中
 魚相手に丁々発止
 くたびれ果てて
 眠り込み

 目覚めてみれば
 あら不思議

 水面の下に光るのは
 膨れ上がった胎児のように
 膝を抱えて蹲る
 月の見事な禿
[次のページ]
戻る   Point(11)