波の下の月/まーつん
一
夜の水平線が
両の腕をさしのべ
その手で満月を挟み
嘆く空から引き離し
海の底に沈めた
光が闇に溶けて
波の下に燃えつき
殺風景な夜空に
取り残された星々は
不思議そうな目瞬きを
パチパチ、繰り返すばかり
二
ボートの淵に腰かけ
冷たい水に足を浸す少年
日焼けした顔に麦藁帽
釣竿一つを手荷物に
夏の海で一日中
魚相手に丁々発止
くたびれ果てて
眠り込み
目覚めてみれば
あら不思議
水面の下に光るのは
膨れ上がった胎児のように
膝を抱えて蹲る
月の見事な禿
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