春を返して/まーつん
 
 終わらない
 冬の時代

 雪は降りやまず
 溶けようとはしない

 隅々まで覆う雪原を
 横切っていく犬の群れ
 
 引かれる橇の
 手綱を取るのは
 死神か 腹黒い
 サンタ・クロースか

 傍らに乗せた大袋
 縛り口から覘くのは
 黒光りする 長い銃身
 ギザギザの鉄条網
 煙を吐く煙突

 銀に輝く地平線へと
 ガタガタ、ゴトゴト、
 運ばれていく

 代わり映えのない
 景色の中では
 地図なんて
 意味をなさない

 どこに居たって
 見えるものは
 同じなのだから…

 かつて
 春は命を育み
 陽は雪を溶かし
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