言葉の人形たち/まーつん
 


言葉って、抱きしめられない
口づけたり、切りつけたりできない

だけど、君に会いたい

針先ほどの穴に
空が吸い込まれていく
風も太陽も巻き込んで

言葉って、食べられない
凍らせたり、燃やすこともできない

だけど、君に触れたい

夜が湧き上がる
崩れかけた
積み木の街の足元から
湧き水のように
壁の隙間を満たしていく

立ち尽くす君は 押し寄せる夜に
背後から 飲み込まれる
その眼を 僕に向けたまま

一日の終わりには
物語の始まりがある

陽の当たらない
寸劇の一幕が

古いノートに
君を書く
窓から流れ込む
街灯の明
[次のページ]
戻る   Point(8)