名月の下で/砂木
会社の帰りがけに車を左折させる
道から少し離れてある実家の林檎畑が見えてくる
減反した田んぼに育てた林檎の木
今はこの世にいないはずだが 父の幻がいる
畑が物陰になり見えなくなると
右側の田んぼ中に 実家のお墓が見える
父さんと 新しい墓標に車の中から叫ぶ
そして実家に寄り 仏壇を拝み母と話す
父が死んでから毎日のようにくり返してる
夜 眠ろうと灯りを消すと
屋根の上を歩くような 階段を歩くような音がする
父さんだろうか 耳をたてるがよくわからない
まだ明るいうちの寄り道だったが秋になり
会社帰りの左折も 月の夜になってしまった
畑も良く見えない お墓も
で
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