一方井亜稀詩集『疾走光』について/葉leaf
一方井亜稀の詩集『疾走光』(思潮社)は、とても視覚的な作品群からなり、そこでは詩の主体の目に映る物事が淡々と描かれていき、またその物事と詩の主体の内面とが相互に影響しあっている。彼女の詩編は恐らく虚構を志向していない。むしろ、固有の自己の紡いでいく出来事の並列が彼女の詩編を構成しているのである。だがもちろん、彼女の詩編は全くのノンフィクションではない。外界の物事、自らの内面のありよう、それらをとらえるのには常に解釈が挟まるし、外界や内界の出来事のうちどれをピックアップして詩編の内へ描き込むかにあたって、彼女の微妙な価値判断が混じるからだ。
車道と歩道を分かつ段差はなく
延々とガードレール
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