【音】塩時計には音がない---三篇のオムニバス/るるりら
 
【記憶の塩漬け】
 



すべての壁は白い  それぞれの壁が白さの中にも蔭を落し
直線で構成された 迷路
一陣の風がふいて 一粒一粒の白砂が
皺やよじれとなり集まり
山となり谷となり
白と 白が宿した黒だけの
道の果ては 無い


原爆資料館の前を通ると
建物の白は 今日も際立っていた
それもそのはず この建築が建造された頃
世界はモダンアートの時代であり
シンプルな 白さを誇った建物 の 
夢をみた

夢の中では屋根のない 白い巨大迷路だった
迷路から抜けると 山や谷や河までもが
すべて 白い世界だった 
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