見送る人/結城 希
 
川があった。

大きな川だった。
その川の中腹に、一人で立っていた。

ときどき、強い風が吹く。
そのまま川面に倒れ込んで、
流れに身を任せてみたくなる。

いつしか、辺りは暗くなっていた。
夏の夜の闇。
遠くから 祭り囃子が響いてくる

一つ、また一つと
小さな灯りを乗せた舟が
下流に向かって 流れていく

よく見知った灯りもあれば
馴染みのない灯りもある

あっと声を掛けようとしたときには
もう、流れに乗って 追いつけない

そうしてふっと彼方に消えて
もう 巡り会うことはない


たくさんの灯りが流れていった
これからもまた 見送るだろう

いつの日か
自分自身が灯りとなって
川を下る そのときまで

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