夕暮れが突っ立っている/
 
赤く染まっていく電信柱の向こうに
夕暮れが突っ立っている

突っ立っているその背中めがけて
君が思い切りボールを投げつける

力の限りの全力で
見渡す限りの赤空へ
思い切りボールを投げつける

電信柱を追い越して
高く高く飛んでいくボールは
しかし どこにも届かない
どこにも 誰にも届かない
夕暮れの背丈は子供の用に伸びて
ボールからゆっくりと遠ざかっていく

それでも君はボールを投げ続ける
どこにも 誰にも届かない
キャッチボールを続ける


やがて夕暮れは
月と挨拶を交わして帰って行った
そして今
夜に染まる電信柱の下に
君が突っ立っている

まだどこにも
会話を終わらせるきっかけを見つけられずに
君が一人 突っ立っている
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