アジェリッド(湧き水)/草野大悟2
 
地獄門の陰のこわれた海のかなたに入学式は立っている。
蝶たちはずいぶん長い間待たされ、いっそのこと青虫に戻ろうか、とキャベツを背負って思っている。
鳥山が立つ海の深層には大きな迷いが泳いでいる。

あの日あなたは死に、産まれた。
七回忌には多くの友だちが七歳の誕生日を祝おうと集まった。
あなたは厳かに言った。
「私は死んだとき産まれているの」

あなたの言葉は
魚になって泳いでいった
魚たちが驚いておしゃべりをはじめ、
歩きだした干潟が、たしかに乳幼児の顔をして永遠になった。

街では
水曜日のネコが
三日の過去と三日の未来を従えて
アンニュイを転がしながらモヒー
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