○/イシダユーリ
れてあたらしくつかむものはないまま日暮れる
歌えば喉が裂けるのなら歌いたい
演じれば皮膚が爛れるのなら演じたい
目が潰れるならば君をみたい
君が
私にとって
君でなくなるのならば
私のなかの白が膨れて君を押しつぶすのならば
震えたい
感動するとわかっている
私は白を押し上げた
くらやみ
晴れ間
旋律
約束は
骨
砕かれる
撫でている
これは
埋められた
「生きたことのない」
壁に
腹を
ぺっとりくっつけている
私の汗をあげる
100年前の恐怖の顔を両手ではさんで
よく似ている
とつぶやく
私は祖母
ぽたりと
落ちる
同じ
同じ
わたしとおなじ
きみはからだをよじる
火がついたように泣く
かわいそうだと言い放つ間もなく
かわいそうだと言われることに
慣れていく7年間
感動したい
感動すれば許されるだろう
私はずっと
誰かが走っている影をふむ
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