○/イシダユーリ
 
吐きたい
ということは
感動したい
ということだ
けれど
どちらも
口にはだされない
低い
紫色の空から
隕石が
落ちるのを
待つことはできない

朝に濡らした手で
夜まで砂場を撫でている
君は
と呼びかける声が
君を
君という風船にして
君は見えなくなる
目がかわいいね
とびだしている
君の皮膚を触ってはいけない
私が侵される

吐きたい

私の粘膜を翻して
電信柱が立っていることを
叫びたい
君は立っている
立っている
電信柱だ
君は立っている
美しい
君は
たましい

朝に濡らした手は午前のうちに乾き
砂にまかれて
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