おじいちゃんの手/栗山透
シャッターを切った
ファインダーから目を離し
カメラに収めた風景を自分の目で確認すると
またすぐに歩きはじめる
タケルは姉が立ち止まっていた場所で
切り取られたであろう風景を
じっくりと観察した
それはたいてい虚ろで
特徴のない風景だったが
タケルには姉がそこを選んだ理由を
なんとなく理解することができた
それは枯れた木だったり
小さな白い花びらだったり
捨てられた香水瓶だったり様々だったが
みんな共通して少し悲しげだった
*
おじいちゃんが死んだとき
マナカは喪服を着たおばあちゃんの
左手の薬指についた金色のリングを
何度も何度も撮影した
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