企業戦士/佑木
 
角を見たとき
その顔が 全く別人に変わっているのに気がついた

人の顔とは不思議なものだ
心の変化が顔の表情をすっかり変えてしまう

精悍な顔つきの企業戦士といった雰囲気が漂っていた中年が
何とも言えない柔和なやさしい中年の紳士に変わっていた

重い鎧を身にまとった企業戦士の心の奥には
家族や両親を守るために戦い続けてきた心優しきひとりの男が
いるのだろう

ひとりの幼児が ひとりの企業戦士の
顔の表情をすっかり変えてしまった

「そうか 心優しき企業戦士なんだ」

なんだか嬉しくなってくる
さわやかな気持ちになりながら

「日本もまだまだ捨てたもんじゃない」

朝の日差しを受けながら心で呟いて

いつもの駅をいつものように降りてゆく
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