夏の欠片/
nonya
秋雨前線が
垂れ下がった
ベランダの
とある午後に
室外機が
押し黙った
ベランダの
とある挟間に
アブラゼミが
ひとつ
転がっていた
季節の掌から
垂直落下した
果実のように
キチン質の
脇腹あたりに
はびこる死の黴
知らん顔して
そおっと
手を伸ばす
とたんに
思い上がった
右手の甲に
オシッコを
浴びせかけて
蘇生したおまえ
夏の欠片が
季節の境界線を
引きながら
消えていった
戻る
編
削
Point
(17)