「逆光」/桐ヶ谷忍
餞別のように落ちる薄い黄金色
夕暮れの中、分かれ道で向き合う
明日の約束はしない
それは暗黙のうちに行われるもの
実際に小指を絡ませて約束しても
安心には繋がらない
また明日
そんな言葉
軽々しく言ってはいけない
また会う日までさようなら
正しい挨拶
君は何も言わずただ手を振る
それもまた正しい
私の顔が見えていたろうか
君から見て逆光の中で手を振り返した私を
私は笑ってなんかいなかった
君は笑っていた
薄い黄金色の笑みを
明日また
会えるのだろうか
明日もまた今日までのように
蹴り飛ばした石はいつかは確実に止まる
会えなくなる日もいつかは確実に来る
もしまた明日があったら
私はまた、逆光の中で手を振るだろう
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