おとこのこ、おんなのこ/あかいいと/茶殻
 
アシカが戯れながら愛を語らう渚のように
夕映えをひと息に飛び越えてしまう公営団地の
長い影に追い立てられて僕たちはたぶん
おんなじように国境のようなものを飛び越えて大人になるんだと思う
・並木の細い枝にかけられたゴムの縄跳び、誰かの忘れ物、誰かの善意、蝉の声

「前にどこかで会ったことない?」
台詞から入るのは半人前のジゴロ
ずるいねと後ろ指をさされるのはやはりいい気分ではない
長ったらしい恋文なんて書いている暇がないわけだけど
そんな実務的な理由じゃなくても
前に一度どこかで会ってた方がいいとそのたびに願う
・メスを入れる前の面影も辿れないのは僕の鈍さなんだろうね、やりき
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