遅咲きの海の音が/八男(はちおとこ)
 
夕刻 大量発生したトンボが公園中空に浮かんでいる
タバコの煙が光の束にさしかかり渦巻いている

何年か前に聞いた海の音がカラカラと

目の前にある空き缶もカラカラと転がればいいのに

それほど強い風も無く
蹴りたい気持ちもそこまで沸いて来ない

一人になりたい とっくに一人になっているのに
そう思ってしまった

もっと一人に もっと一人になればいい

昼間見た汗まみれのおじさんの残像が
この胸の染みとなって消えてくれない

いや しばらく消えないでいてくれとさえ思う

(ははは)

わ・た・し は 今

昼間見た汗まみれのおじさんで
こうしてベンチに腰掛けて
キセルを細長く吹かしながら

確かに 確かに涼んでいる


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