書物の告白/yamadahifumi
私とは閉じられた一冊の書物である
誰にも隅の隅まで読まれてしまい
そうして、飽きられて部屋の隅に放り出された
そんな書物である
私は・・・私の中の物語が人々にとって
一体、何の価値もない事をよく知っている
私の物語はありきたりだし、平凡だし、面白みがない
興味をひくような刺激に乏しいし、かといって、人を励ます言葉も一切ない
だから、そんな私の物語に、人はすぐに見向きしなくなった
それで、私は一冊の書物として、部屋の隅でただ一人、くさっている他なくなったのだ・・・
・・・ただ、人は知らない
私が人々に見えないようにしながら
密かにこの物語を書き継いでいる事を
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