対話篇 (月)/マチネ
 
星もない空に
月だけが
のうのうと居座っている

暗い空をより暗くする街の光を見下ろしながら
私はおまえと窓際にいる
くすんだ窓は靄のように月光を宿している

私たちは酒を飲んでいるのだ
盃を持ち
体をせわしなく揺らしながら

静かな部屋にあかりは灯っていない
窓枠のまま縁どられた床の真白な表面を
おまえは爪先でなぞっている
私はおまえを見つめている

木質の床の黒く目玉のようになった部分に親指を押し当てた時
おまえは小さく欠伸をするのだ
呻くように唇をすぼめて

瞬間

私はおまえの口に盃を捧げるだろう
星のない空に
のうのうと居る月が
はっきりとうつった
静かなその一杯を

おまえが盃をとる
ちいさな唇をさらに縮めておまえはその一杯を呑む

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