真夜中の迷子/マチネ
ゆるやかなかたちをした盆の夜に
引き離された電信柱は
ふるえる蝉の叫びを聞きつつ
ただひとり
とーん
と、立っているのであります。
向こうの小路の小さな光は
いったいどいつのあかりであろか
白々とした夜の田園に
取り残されたビニル案山子は
遠目に蛍の灯りを眺めて
すん
と、うつむいているのであります。
森の向こうでごうとなくのは
かぜであろうか、それともやはり
トラクターが走り去る
コンクリートがなめらかな体を固め
石油の流れが膜をはりつめ
やがて引き離されて
取り残されて
忘れたのだね
置いていかれた夜中の迷子は
かくのごとく
さみしく
つぶやいているのであります
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