真夜中の迷子/マチネ
 
ゆるやかなかたちをした盆の夜に
引き離された電信柱は
ふるえる蝉の叫びを聞きつつ
ただひとり
とーん
と、立っているのであります。

向こうの小路の小さな光は
いったいどいつのあかりであろか

白々とした夜の田園に
取り残されたビニル案山子は
遠目に蛍の灯りを眺めて
すん
と、うつむいているのであります。

森の向こうでごうとなくのは
かぜであろうか、それともやはり

トラクターが走り去る

コンクリートがなめらかな体を固め
石油の流れが膜をはりつめ
やがて引き離されて
取り残されて

忘れたのだね

置いていかれた夜中の迷子は
かくのごとく
さみしく
つぶやいているのであります
戻る   Point(4)