海辺の丘陵で 〜Sせんせいに〜/オイタル
白金の雲が天球を流れ
大きな波はぽちゃぽちゃと音を立てて
わたしたちは海を見下ろす小高い丘陵の
点のような椅子に腰掛けていた
腰掛けて
水平線のあやうい空気の色をなぞりながら
ゆっくりとテーブルの上で指先を転がしていた
そのころせんせいは
痛む胸をようやく撫で下ろしながら
もうあのおおきな夏の雲海の波打ち際まで上っていて
わたしたちや わたしたちのやってきた地上の道や
海の端を駆ける少年たちの細い踵や
それから釣り人の無数の光る指先に
長く視線をくれていたに違いない
ようやく雨の気配も消えた真夏の十時
淡くなだらかに広がる丘陵で
わたしたちはチョコの銀紙をな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)