涼をとる/佐東
駅前に
アーケードの架かった商店街がある
八割方の店舗はシャッターが下りた状態のまま
今やその役目を
郊外型の大きな店舗に奪われてしまった
下野薬局の前の
排気ガスで煤けてしまっているサトちゃんは
焦点の合わないうつろな瞳で
空車のタクシーを
ただぼんやりと眺めている
ボンネットに反射する
ギラギラした夏のひかりは
今まさに夏本番を迎えようとしてる合図のようだ
傍らで ひっそりと
その生涯を閉じようとしている
夏なのに冬の枯野のような商店街の一画に
かつての賑わいを
取り戻したかのようなお店がオープンしたのは
この夏に入ってのことだった
ランチタイムに
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