茹卵とオリブの腐ったサラダ/高濱
 
風景画の二重の隠絵は髑髏と淑女を
  開闢する門扉に磔刑の基督教徒達に
    開示し
    変化と宗教の死を告げる通達人の         
      酷薄な電報を打つ手首を
       空中に指標として懸架する        
運命は局在し、気紛れに人間を嘲弄する
       行着く時の流れは果てなる           
      場所をあらゆる試論に
    セミネールの受講人達へ掲示するが
    椅子の下
  螺旋の脚は縺れ合いひとつの
欲動機関となり自動機械人形の劇装置は
  彌散曲の伽藍堂に
    翻る洋蘭と青藍の唐菖蒲を
      尺度に静止させ 
       純粋鏡像の胎児の卵膜 
    楕円の卓子並ぶフロアに垂下する   
       紡錘形の渦巻く巡礼者
      夜と昼の挟間に郵便夫の   
    ベルを鳴らす手套が
影を残して消える八月
    ああ、
     あの火事の顛末は《現在形》より
      忘却された瓦礫降る《黒の雨》

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