flower/佐東
 
やさしい体温を
手放した
幼い夕ぐれの あわくひろがる
虹彩のふちで

一日中
なんにも
口にしていなかった
なんて
いのりのことばみたいに
くりかえしては
いちまい いちまい
花びらを ちぎる

(凌霄花の鮮やかなオレンジ
おぼえたての はなうた
それから)

ちぎられた花びらは
空よりも たかい場所
から
夕立のように降りそそぐ
ちぎり絵の
街並みの隙間を うめて
夜にしか 咲かない
名まえの つけられていない
花が 開花する

(水と
水を巡る
色のないたましい)


あなたは
たばこに火をつけるような仕草で
わたしの名ま
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