晩い道化/すみきたすみれ
 
公園の噴水前のベンチに腰掛け
土鳩に餌やる
みすぼらしい趣味人が
裏では道化をしているなんて誰も知らない
細い腕は
杖よりも細い
皮膚は土色で
わずかに青ざめ
眼はまだなお光を宿している
灰皿で煙草が
燻ぶって崩れた
新聞を畳んでペンをとるのが
日課だという
葉書に、原稿用紙に
思いついた端から警句を書いて
気に入ったものは新聞に
投稿し
さらに色紙に
小筆で書いて
みる、詩も書も
すべて我流だが
老境のなせる業だなんて
言って
照れて見せて笑う

黄ばんだ爪から落とされる
苦言はどれも
老境のなせる業とか
深みに達せられた皺と、伝う
発露
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