自由席で待つ/蒼木りん
 
触れる手が欲しいときに
彼方は隣にいなくて
過去のいい夢ばかりをリピート

冷えたままの自由席にスポットライト
時はジッと焼け焦げてしまった
自由席は自由
彼方と私の距離は一定の線まで自由
彼方はここにはもう
帰って来ないのかもしれない

でも
私はまだ前を向けない
決意のさだまらない私が
逃がした魚は大きかった
彼方は182cm
見え透いた自己主張をしない

キスするには
唇が薄いひとだけれど
愛だとか心だとかより
私が欲しかったのは
私を見ている眼だった
私を求める彼方の姿だった

気づいたのは
それは
彼方も同じだったということ

舞台では
演奏が始まっているのに
私はまだ前を向けない


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