トーチカ/嘉村奈緒
天井に頭がつきそうなあなたと
どてっ腹に穴のあいた私は
どこか浮かれた心地で手を繋ぎます
やがて日暮れて
子どもたちはそれぞれのミノに潜りはじめる
私たちも
アンゴラのマフラーを身につけます
高山病に悩むあなたの指先に
冬の花はこぞって受粉させる
あなたは徐々に枝分かれしながら
美しいミツロウになっていくのです
順序良く冬支度を終えれば
キリキリと木枯らしがやってくる
木枯らしに滅法弱いあなたと私は
身を寄せ合って
冬に相応しい会話を幾つかと
静粛な純愛をします
(ミツロウ=蜜蝋)
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