聖銭(ひじりぜに) /服部 剛
僕がある記事を書いて
入ったお金を
そのままぽんと、妻に渡そう。
なぜなら妻は、もうすぐ2歳の周を抱えつつ
僕の書いた原稿を活字に打ってくれたり
郵便ポストに入れたり
手づくり詩集を印刷したり
深夜に駅まで車で迎えに来てくれたり
原稿料を渡すだけじゃあ、足りないか…
僕の原稿による臨時収入は
そんな理由(わけ)で(タダ)で、いい。
妻は無償のこころで働き
僕も無償のこころでペンを持ち
天下を回り回って
お金というものが、もし
愛を帯びたものに変換されるなら――
一枚の小銭さえ
瞳を閉じた闇の中
ちゃりーん、と尊い音(ね)を立てる
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