わたす/砂木
 
死体って本当に動かないんだ
父さんの死体は 父さんと言っても動かず
とても不思議だった

死体だけども 父さんと変わらずに呼び
唇を水に浸した綿で拭いたり
保冷剤を取り替えるのを 成る程と見たり
お線香をあげたり お水を変えたり
御団子もあげたけど 父さんは起きて食べない
呼吸もしていないのが不思議だった

火葬して骨になったら 私は耐えられるのか
長女たるもの頑張る気でいたが 自信はなかった
しかし 父の骨は思っていたよりずっと白くて立派で
忽然と表れた骨になった父も 父さんなのであった

毎日 畑で鍛えた体だからな
側から聞こえてきた声に 誇らしささえ感じ

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