ふたたび、レヴィナスのイリヤ/はなもとあお
【ふたたび、レヴィナスのイリヤ】
戦争で、なにもかもが変わってしまった、のに、
世界は、なおも、ある
中心をうしない、意味を奪われた、
そんな、世界が残されて、ある
死者がもたらした、穴だらけの世界に
生き延びたものたちの日常が訪れ
イリヤの発する言葉が無を満たし埋めてゆく
死者がもたらした無さえ、何もかもを無意味にしてしまう、存在の悪
想像のなかですべてを破壊したのちにも
ある、は、あり
存在することを自ら引き受けることのない
沈黙の呟き、人ではないものの、闇が訪れる
闇はざわめき
わたし自身の意識さえ透明に闇と溶け合い
もはや「私」ではない<あ
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