増えるばかりだ/マツオカシロウ
 
いつからか
乾杯と久しぶりは
セットになって
テーブルを彩る小皿は
ポテトフライから
サラダになった

ポーカーみたいに
手札を選ぶ
話せないことも
増えた気がする

「何を考えてるの」
ビー玉みたいな瞳で
僕を覗きこむ君

その仕草が見たかっただけと
今日も言えなかった

話せないことは
増えるばかりだ

疲れ顔だったから
遠慮したけれど
やっぱり写真は
撮っておけばよかった

思い出にしたいことは
「そんなにないから」
つよがりを差し引くと
「今しかないから」

次の乾杯には
間に合うだろうか
久しぶりよりも前に
君が覗きこむよりも早く

話したいことが
増えるばかりだ
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