アキレス最低の戦い/和田カマリ
アキレス腱を断裂してもう走れなくなって
陸上部をやめて俺たちのサークルに来た後輩がいた
短距離走者だった奴はクラウチングスタイルから
ロケットスタートを決めようとして全パワーを右足先にかけた
「ビシッ」
スタートと同時に奴の選手生命は終わった
その話を事前に知っていた俺は
サークルの入会挨拶をしていた彼に
「スタートしてアキレス腱を断裂する所を再現してくれ!」
と言った
「はい、良いですよ先輩。」
奴はヨーイ・ドンで
「わぁ〜。」
うずくまる真似をしてくれた
みんなに受けた
みんな笑っていた
俺は有頂天
そうさ
そんな話はネタにしちまえば良いんだよ
だけどそれから
だいぶ時が過ぎた今
その時の奴の気持ちを考えると
俺は
情けないやら
恥ずかしいやら
とても苦しんでいる
戻る 編 削 Point(4)