悲しくてあさましい心/和田カマリ
あの東北の地震の時
僕はテレビを見ていた
みるみる海岸線が無くなって
黒い塊が街を飲み込んで行くのを
僕はテレビで見ていた
たくさんの人が酸欠の魚みたいに
ぎっしりと港に浮いているのを
僕はネットで見た
服を着た死骸や裸の死骸を
僕はネットで見ていた
原発がぶっ壊れて
みんなが右往左往していた
入り江に火の手が上がっていた
子供が泣いていた
親が泣いていた
その時の僕の虚無が
なんとも堪らないのだ
悲しくてあさましい心
白い道化師が笑う
悲しくてあさましい心
石巻に親戚がいました
仙台に友達がいました
他人事
石を投げつけて欲しい
僕は馬鹿な僕に
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