玉葱なひと/たま
 
乾いてる軒下暮らし梅雨の日もそれが定めとうな垂れて

ほんとうに美しい玉葱の芯どうしてもほら泣いてしまいます

玉葱の玉を採ったら葱だらけでもそれは夢二兎(にと)を追うひと

玉葱の芯に隠れて冬の夢凍てついたまま凍てついた夏

この星(ひと)にしがみつくなら玉葱の針のような根アザラシの髭

玉葱の身を剥くひとはいませんか蚊帳に隠れて泣きたい夜に

どうしても言えません刃を落とすのはあたしの情け憎いだなんて

あなたはいつも食べるだけ涙見せても笑うだけだから男ね

九条の葱に憧れたあんなに細く色っぽく八百屋の軒で

一度でいいのバーベキュー海辺のような
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