そらが高い/
たにがわR
白い雲がばらけて見えるのは錯覚ではない
夏は終わりを告げず
静かにわたしの前から去っていた
挨拶はしないことにしている
涼やかな朝の前にそらが幾らか高い
いつも薄れていく記憶の中で
憶えていることは
その朝のできごとではなくて
その朝の雰囲気だったりする
満ち溢れていく蒸気として
くものすきまから見えるやまなみのなかに
鳥を見ることの無いそらのあいだで
限りなくひろがる青色
わたしが昇華していく
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