そらが高い/たにがわR
 

白い雲がばらけて見えるのは錯覚ではない
夏は終わりを告げず
静かにわたしの前から去っていた

挨拶はしないことにしている
涼やかな朝の前にそらが幾らか高い

いつも薄れていく記憶の中で
憶えていることは
その朝のできごとではなくて
その朝の雰囲気だったりする

満ち溢れていく蒸気として
くものすきまから見えるやまなみのなかに
鳥を見ることの無いそらのあいだで
限りなくひろがる青色

わたしが昇華していく



戻る   Point(4)