キッチン 4/平井容子
花むした天体を
こまかく細断された視点から見る
ノートは
かわいたシンクに置き去りにされていた
最初のページをとばして、つぎから
こどもらへ宛てた物語が月面語で書いてある
ひだりさがりになる癖をわらう
ときおりちいさなコーヒーの染み
(気が、狂っているのか?)
知らない言語の歌はどうしてこんなに美しくひびくのだろう
ものすごい速さをして液体は空へもどり
なにかを頼みたいのにのどは手をとりそこねつづける
あるいは、わたしたち
(よろしく)
なにかのための場所にあろうとする血色がめくれて
その場かぎりで素粒子にちかい貝を勝ちとる
歌やめたらまた、歌
(そこにいたのか)
無きもののために透きとおったグラスにまなざしを注ぐ
ノートはいっぺんの悔いもなく湿っていた
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