トワイライト/村正
 
欠けたカップを握る

懲りずに思い出していた

ちょっといいガテマラを買ったのに

ちょうどいい自販機で買った缶コーヒーを

彼はベランダで飲み干した

あの昼の滲みが窓にうつる

もうすこし朱ければ様になった

そして彼は繰り返す

タバコに火をつけて

灰にしない思い出を選んでいる

誰にも言えないただいまを

けむりに巻いて

特別でないことを知ってしまった

どうにか君に知らせたい

ショーケースの果てを

悩み抜いた先に落ちた朝も

灰を踏みにじっていた

グラデーションの先はわからない

タバコに火をつける

サンダルを焦がした灰

夕餉へ歩く二つの影

離れるな

つなげない日のために

隠された地平とうるさい街灯

叫びたくなった

あげたかったのは滲みの髪飾り

待つから焦がれていく

避けようのないすべてには

いつも猶予があった
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