雪色/F (from send-ence)
 
現実が輪郭を失って虚無へと形を変えた日に
雪が降った

大急ぎで明日に向かわなければ

冷たさを伴った足音が
少しずつ体から色を奪っていく

「色づきすぎた僕らはいらない」

そう感じてしまうには
まだ足音の数が少なすぎる

少なすぎるはずなのだけれど

ただ遠くに見える煙突の煙が視界に映るのを遮られるだけで
こんなにも怯えてしまう
僕らはたった1世紀分の代金を払った見物人にすぎないことを
物語の作者は告げようとしている

広がりすぎた僕らが向かう先に
声を剥ぎ取られた1匹の蝶が舞っているのが見えた
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