トムソーヤー卿/ゴースト(無月野青馬)
 
「夏の空気が
彼の似姿になって
見えるものよりも
見えないものを覗かせる


夏は
懐かしいことも
哀しいことも
それから
思い出したいことも
呼んで来てくれる


彼と見回った
当て所もない隠れ道
基地も
今ではもう無い
歪な近代建築の下


心は
変わっていないと
信じたい
夏は
変わっていないと
信じたい
街は
変わっていないと
信じたかったけれども
今は彼の
棲み家に似合うような
街ではない


僕の
ただ一つの自慢は
あの日見つけた
巻き貝を未だに持っていること
今でも、今だからこそ
大事に扱って
時々、思
[次のページ]
戻る   Point(4)